不動産投資における投資指標
今回は、収益不動産を購入を検討するにあたって重要な、投資指標についての紹介と具体的な解説をしていきたいと思います。
まず投資指標についてですが、投資物件を購入するかしないかの判断をするために必要な指標は下記になります。
・営業純利益(NOI)
・総収益率(FCR)
・イールドギャップ(YG)
・ローン定数K
聞き慣れない用語ばかりかもしれませんが、これを理解して頂ければ、実際に収益物件を検討する際の、正しく適切に物件の検討をする事ができます。
営業純利益(NOI)・総収益率(FCR)
投資家の皆様が物件検討する際に、まず気にされるのが「利回り」です。
ポータルサイトに掲載されている利回りは表面利回りで、満室想定家賃(潜在総収入)を物件価格で除算したものになることは、周知の通りです。
ただ実際に、年間通じて満室になることはなく、空室が発生したり、滞納が発生したりますので、満室想定家賃を投資判断の際に期待するのは現実的ではありません。
よって、満室想定家賃から空室・滞納損失を引いたものを考える必要があります。
ここでは、実効総収入とします。
実効総収入=潜在総収入-空室・滞納損失
投資判断する際には空室・滞納損失は5~10%程度で考えます。
さらに、実際に物件を保有していくと様々な経費がかかります。
管理手数料、建物管理費用(清掃、エレベータ管理、受水槽清掃、消防設備点検)、水道光熱費用、固定資産・都市計画税(固都税)、原状回復費用 等々
これらを運営費とし、収入から控除しなければなりません。
以上より、実際の収入(営業純利益)は次の通りとなります。
営業純利益 NOI = 実効総収入-運営費
このNOIが物件の本当の収益力を表します。
そして、このNOIを物件価格で除算したものを総収益率(FCR)と呼びます。
総収益率 FCR = NOI / 物件価格
いわゆるネット利回りとも言われていますね。
この考えがあるだけで、投資判断に幅が出てきます。
簡単なモデルケースを取り上げます。
■共通条件
物件価格:10,000万円
満室想定家賃:1,100万円
表面利回り:11%
空室・滞納損で100万円とすると、実効総収入は:1,000万
物件1.RC造 4階建
物件2.木造 2階建
物件1、2ともに表面利回りは11%です。
では総収益率FCRはどのようになるでしょうか。
物件1にはエレベータ、受水槽、自動火災報知機など点検が必要が設備が多くついています。
さらにRC物件は固都税が高いです。(感覚的に1か月の家賃は飛びます)
結果的に、運営費は200万程度となります。
物件2は、特別点検するものもなく、消火器の点検くらいです。
日本の税制では土地の固都税はかなり減税され、かつ木造中古物件の建物に対する固都税も安価です。
運営費は100万程度となります。
まとめてみましょう。
総収益率FCR=(実効総収入1,000万-運営費200万)/物件価格10,000万 = 8%
総収益率FCR=(実効総収入1,000万-運営費100万)/物件価格10,000万 = 9%
このように、同じ表面利回りでも、実際の利回りであるFCRで比較すると、かなり違くなってくることがわかります。
表面利回りは単純に求めやすいので、使いやすい指標ですが、投資判断の際は、空室率の考慮や、運営費がどの程度かかるのか確認することで、正しい投資判断ができます。
イールドギャップ(YG)
「イールドギャップ」についてです。
書籍やブログなどでは、次のようなことが一般的に言われています。
物件利回りと金利の差をイールドギャップといい、物件利回りが高くても金利が高ければ、その差を大きく取ることができないので、利益が残らない。
仮に物件利回り10%の物件を購入するにあたり、金利3%で資金を調達した場合、イールドギャップは7%ということです。
実はこれ、間違ってます。
実際に物件を購入された方はご経験あると思いますが、融資を受ける際に金融機関から提示される条件は次の通りです。
1.融資金額 (多くの方が、自己資金が少ないことを望みます)
2.金利(皆様、金利が安いことを望みます)
そしてかなり重要な要素
3.返済期間(多くの方が、長期返済を望みます)
これらが融資条件であり、これによって月々の返済額が確定します。
先ほどのイールドギャップの定義には期間の要素が一切入っておりません。
仮に、ある投資家の方が望むイールドギャップが7%だとします。
では次のような物件は投資対象になりうるでしょうか。
・物件価格:10,000万円
・年間家賃収入:1,000万円
・表面利回り:10%
・借入金額:9,000万
・金利:3%
・返済期間:10年
先ほどの定義上、イールドギャップは7%取れていますが、キャッシュフロー的に投資対象になりません。
簡単に計算してみましょう。
空室率5%、
運営費(固都税、PM費、BM費など)を家賃の20%だとすると、
正味稼働利益は
1000万×95% – 1000万×20% =750万
一方、年間返済額は、1040万
税引き前年間キャッシュフローは
750万- 1040万= -290万円
このように、間違ったイールドギャップの定義では、投資判断が出来ていません。
重要なのは融資期間ということです。
バランスは考えなければなりませんが、基本はできるだけ長くです。
投資判断できる本当のイールドギャップには先程ご紹介させていただいた、「物件自体のネット利回りを意味する総収益率FCRと今回ご紹介するローン定数Kの差」がイールドギャップ(YG)となります。
まちがっても物件表面利回りと、調達金利との差でないことは強調させていただきます。
ローン定数K
ローン定数Kは以下の計算で求められます。
ローン定数K = 年間元利返済額/借入総額(残高)
数式をご覧いただくと、年間元利返済額には融資期間の要素が入っていることに気付かれると思います。
つまり、同じ金利であっても、融資期間が長ければ年間元利返済額が小さくなりますので、ローン定数Kも小さくなるということです。
ローン定数が小さくなれば、総収益率FCRとの差が大きくなるので、イールドギャップが大きく取れる=CFが大きくなるということにつながります。
この考えを持つことで、ライバルに差をつけることが可能です。
簡単なモデルを挙げてみます。
物件価格:5000万
年間家賃収入:700万(表面利回り14%)
NOI:500万(ネット利回り(総収益率)10%)
構造:鉄骨造
築年数:24年(残存10年)
たとえば、次の2つの金融機関が本物件にそれぞれ以下の条件であれば、融資しても良いとした場合、皆様はどう判断するでしょうか。
金融機関A:貸出金額5000万 金利2% 期間10年
金融機関B:貸出金額5000万 金利5% 期間25年
感覚だけで判断される方は、どちらも嫌がるかもしれません。
「Aは金利が安いけど期間が伸びないので、キャッシュフローが回らなさそうだな。」
「Bは、金利が高すぎて無理」
実際に数字で見てみましょう。
本日ご紹介したローン定数Kを求めてみます。
金融機関A
K = 年間返済額552万/借入額5000万 =11%
金融機関B
K = 年間返済額350万/借入額5000万 =7%
本物件の総収益率は10%でした。
よってそれぞれのイールドギャップは
金融機関A
YG = 10% - 11% = -1%
金融機関B
YG = 10% - 7% = 3%
金融機関Aはそもそも投資対象になりません。
キャッシュフローは赤字となります。
そして当初金利が高くて無理だと思っていた金融機関BはYGが3%も取れているため、潤沢にCFが回ります。
(注意点は期間が長いため元金が減りにくいので、出口戦略をどうとるか考えておくことです。)
このように、正しい投資係数を理解しておくことで、イメージの判断でなく、客観性をもって判断できます。
そのためには、ご自身で理解することも大切ですし、アドバイスをしてくれる良きパートナーを探すことも大切だと考えます。
まとめ
今回は、正確に投資物件を判断するための投資指標についてご紹介しました。
これらの指標を知らないで不動産投資を始めている方も見受けますが、ハッキリ言って「投資家失格」です。
私が投資相談に乗る際は、こちらの指標を使いながら出口戦略も踏まえたご提案をさせていただいております。
ぜひ検討されている方いらっしゃれば下記よりお問い合わせください。
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